足のむくみ
むくみのことを、医療用語で浮腫(ふしゅ)といいます。
足のむくみ=足の浮腫が起こるのにはいくつかの原因があります。
むくみには、一時的のものと、なんらかの病気が原因のものがあります。ほとんどの場合は一時的のものですが、心臓や腎臓などの内臓の機能が低下していることで生じることもあります。
診察、下肢静脈超音波検査、採血、心臓超音波検査などを駆使して正確な診断を行います。適切な診断のもと、お薬を飲んだり、理学療法といって効果的な運動や医療用ストッキングの着用で治療を行います。
1. 心不全
心臓の機能が低下することで、血管の中を流れる血液が心臓に戻れないため、血液中の水分が血管からしみ出てむくみになります。心不全によるむくみは通常足だけでなく、手や顔までむくむことがあります。採血や心臓超音波検査で診断することが出来ます。
2. 腎不全
腎臓の機能が低下することことにより、体内の水分がうまく排出されないために、体に貯まった水分がむくみとなって表れます。採血検査で診断することが出来ます。
3. 低タンパク
何らかの原因で体内のタンパク(アルブミン)が低下することで、血管内の水分が血管からしみ出てむくみとなります。採血検査で診断することが出来ます。
4. 甲状腺機能低下
首にある甲状腺という臓器の機能低下によります。採血検査で診断することが出来ます。
5. 薬剤性浮腫
血圧の薬が原因でむくむことがあります。むくみの原因が分からない場合に血圧のお薬を変更して様子をみることがあります。
6. 廃用性浮腫
むくみの特徴として最も多いのがこれです。
- 高齢
- 痛くない
- 両側
- 膝から下のむくみ(太ももはむくまない)
- 運動不足(椅子に座ってテレビを見ている時間が長い)
廃用性浮腫の特徴は、写真のように指で押したときに指の跡がつくむくみです。
写真:廃用性浮腫1.2 と 動画
治療は、まず適度な運動(足を動かす)、椅子に座っている時間を減らす、医療用ストッキングの着用です。効果が表れにくい方には、持続型の利尿剤(尿を出させる薬)を短期間用いることで効果が表れやすくなります。
7. 深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
最も心配な足のむくみ、腫れ(はれ)です。この病気は、血栓が流れて肺に飛んでしまうと命に関わってくる心配があります。
- 比較的急激な発症
- 片側のみ腫れる、むくむ(カチカチ、パンパンに腫れる)
- 下肢全体が腫れる、むくむ
- 張りや痛みがある
- 発熱、熱感がない
写真:深部静脈血栓症1.2.3.
診断は、採血と超音波検査が有用です。血栓症の診断がつき次第、抗凝固薬(血液サラサラにする飲み薬)の服用を開始します。
息苦しさを合併している方は、血栓が肺に飛んでいる肺塞栓症(はいそくせんしょう)を合併している可能性があるため、総合病院で検査を行い、入院が必要になることがあります。
8. 下肢静脈瘤
あしの静脈瘤がひどくなると、足に血液がうっ滞してむくみを生じます。
下肢静脈超音波検査で、静脈瘤があるかどうかを判断します。
医療用ストッキングの着用やレーザー手術を行うことでむくみは改善します。
9. リンパ浮腫
婦人科のがんの手術(卵巣がんや子宮がん)を受けた方に、手術後何年かたって足がむくんでくることがあります。お腹の中のリンパの流れが手術によって影響を受けて、足のリンパ液が流れにくくなることが原因です。
また、全く原因がないにもかかわらず突然リンパ浮腫になる方もときどきいらっしゃいます。
リンパ浮腫
完全に治すことは現在の医学では困難とされています。医療用ストッキングを着用したり、静脈リンパ管吻合という特殊な手術で症状が和らぐことがあります。